支持療法シリーズ第二弾です。
今回は抗がん剤の副作用のひとつ「下痢」のときに処方される薬について説明します。
▼第一弾の吐き気・嘔吐の薬についてはこちら
抗がん剤で起こる代表的な副作用
おさらいとなりますが、「支持療法」とは抗がん剤(FOLFIRINOXやGEMーnabパクリなど)で出てくる副作用に対する治療を言い、抗がん剤で出やすい症状というとこれらが挙げられます。
- 嘔気、嘔吐
- 下痢(粘膜障害)
- 末梢神経障害
- 口内炎
- 骨髄抑制
- 脱毛
母の場合もそうでしたが、膵臓がんで手術をすると、膵臓の近くにある神経叢(そう)を摘出した場合に難治性の下痢になりやすいとされています。
そうでなくても、胃や腸を摘出している場合もダンピング症候群が起きることで下痢になったり、抗がん剤でも下痢になることがあります。
そのため、どうしても膵臓がんになると下痢との闘いになることが多いです。
今回は、抗がん剤下痢になったときに、処方されることのある薬について説明していきます。
下痢(粘膜障害)
FOLFIRINOXで下痢を起こす主な薬剤はイリノテカンです。
▼FOLFIRINOXについて詳しくはこちらの記事をどうぞ
下痢で注意するのは抗がん剤投与後、「24時間以内で起きる下痢」と「24時間以降に起きる下痢」で対応が異なる点です。
ではそれぞれに使用する薬剤と対処法について説明していきます。
24時間以内に起こる下痢に有効な薬
24時間「以内」の下痢が起こる原因
このタイプの下痢は、「コリン作動性神経」と呼ばれる神経が過剰に反応することで起こります。
その過剰反応を抑える為に使用する薬を紹介します。
コリン作動性神経:アセチルコリンと呼ばれる物質によって刺激され、腸管の蠕動(ぜんどう)運動を促進し、他にも鼻水や冷や汗、よだれなどが出ることもあります。
ブスコパン(ブチルスコポラミン)
ムスカリン受容体拮抗薬と呼ばれ、腸管の「コリン作動性神経」にある「ムスカリン受容体」を拮抗することで腸管の運動を抑え、下痢を改善します。
コリン作動性神経には「ニコチン受容体」と「ムスカリン受容体」と呼ばれるものがあります。「ニコチン受容体」は主に神経や筋肉に分布し、「ムスカリン受容体」は神経や臓器に分布しています。
腸管には「M3」と呼ばれる受容体があり、それが腸管の動きを調整しています。(ムスカリン受容体はM1~M5まで分類され、それぞれに作用が異なります。)
ロペミン(ロペラミド)
オピオイド受容体刺激薬と呼ばれ、腸管内に存在する「オピオイド受容体」を刺激することで蠕動運動を抑制し、下痢を改善します。
「オピオイド受容体」は麻薬などを使用した再に刺激される受容体でもあります。しかし、このロペラミドは血液脳関門(BBB:Blood Brain Barrier)と呼ばれる脳と血管の関所を越えることができない為、麻薬のような作用を示さず、下痢にのみ効果を示します。
硫酸アトロピン
抗がん剤治療の前にアトロピンを点滴投与することで、「コリン作動性神経」が刺激されなくなる為、下痢を防ぐことができます。
24時間以降に起こる下痢に有効な薬
24時間「以降」に下痢が起こる原因
この下痢はイリノテカンの代謝物(SN-38)が腸管粘膜を障害することで起こります。
下痢は1週間前後経ってから起こることもあるため、注意が必要です。
これは薬の代謝物が腸管に留まる事が原因の為、便として排泄することが重要となります。その為、緩下剤などで便の排泄を促すこともあります。
酸化マグネシウム
点滴の前に服用し、便の排泄を促します。排便が促進されることで粘膜障害のリスクを少しでも下げることが可能になります。
その他の場合:毒素を出し切り、それでも下痢が治まらないとき
あえて最初の1~2週間は下痢を出して毒素を出し切ります。
それでもまだ下痢が続く場合に処方される薬があります。
ロペミン(ロペラミド)
オピオイド受容体刺激薬と呼ばれ、腸管内に存在するオピオイド受容体を刺激することで蠕動運動を抑制し、下痢を改善します。
ビオフェルミン
整腸薬。お腹の腸内細菌のバランスを整え下痢を改善する。
その他の場合:腸内細菌がイリノテカンを代謝しないようにして下痢を抑制する
半夏瀉心湯
漢方の薬。細菌が腸管循環後のイリノテカンの「グルクロン酸抱合」を取らないようにする。
腸管循環とは腸管から吸収された薬物が肝臓で代謝を受け、胆汁として再度腸管に排泄されることを言います。その際、肝臓で「グルクロン酸抱合」などを受け、無毒化されているのです。細菌はこの「抱合」を取り除くことが可能なため(取り除くと無毒化できない)、それを抑制することで下痢を起こさないようにしています。
その他の場合:腸管内をアルカリ性にして、下痢を起こすSN-38の毒性を抑える
ウルソ(ウルソデオキシコール酸)
胆汁の成分。アルカリ性を示す為、SN-38の活性を抑えることができる。
「SN-38」は酸性下で活性体として存在する為、アルカリ性にすることで細胞障害性が低下し下痢の頻度を低下することができます。
最後に(便秘にも注意!)
また、イリノテカンは下痢だけではなく便秘にも注意が必要です。
粘膜障害を受ける → 食欲低下 → 腸内の便の量が減少 → 便秘
といった流れで便秘を起こすケースや、麻薬の使用により便秘を起こすこともあります。
そのため、イリノテカンは下痢や便秘に注目するのではなく「排便コントロール」に注目することが重要です。
イリノテカンを使用する方は排便コントロールがサイクル中の目標となることを忘れないようにしてください。
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