膵臓がん進行過程 初期~後期のまとめ

母が膵臓がんだと分かった日から、亡くなるまでの症状や薬、看病や対処についてまとめています。

がんの進行や症状は人それぞれですが、このようなパターンもあるということを知れば、治療の判断材料のひとつになるかもしれません。参考にしてみてください。

母の場合の膵臓がん

どんな病状だったのか

母は膵頭部にできた膵臓がんでした。

CT検査での発見時、黄疸はなく、胆管の潰れが確認され、
ステージはⅢといわれていました。

検査から一週間後の手術では、黄疸が出始め、
腫瘍は膵臓の外に浸潤しゴルフボール大のサイズになり、ステージⅣaまで進んでいる状態でした。

 

進行過程まとめ

闘病8ヶ月の全体像

下の図のように体調、出来事が推移していきました。

母の膵臓がん進行過程 全体像

膵臓がんが分かったのは2014年12月。そこから検査を重ね、すぐに手術となったのが12月25日のクリスマス。

約1カ月の入院を経て退院。その後は2週間に1回の通院で様子を見ます。

医師にはすぐに抗がん剤を勧められましたが、体調が優れず不安もあったため、抗がん剤TS-1を投与したのは手術から4ヶ月後の4月。下痢と体重減少がひどく、4クール(5投2休=5日飲んで2日休みで1週間×4回なので1ヶ月服用)で中止。

下痢が治ったらゲムシタビン(ジェムザール。点滴の抗がん剤)を投与予定だったが、体調を考え断る。

6月までは普通に生活でき、旅行にも行けたが、7月に入りだんだんと体調が悪化した。

月毎の出来事をわかりやすいように色分けしています

これから月毎の出来事を紹介します。色で分類しています。

項目は、

どんな症状が出たか・・・ 症状
看護に関すること・・・ 看護
処方された薬・・・ 薬
そのときの食事・・・ 食事
受けた検査・・・ 検査

の5項目です。

 

初期(検査による発見。手術と入院~退院まで)

初期(検査による発見~手術・入院~退院まで)

11月下旬~1月(膵臓がん発見~2カ月後)の様子です。

■2014年11月下旬 肺炎になる。膵臓の数値が悪いことに気づいて精密検査へ。

事のはじまりはここからでした。

 

 症状  胸の痛み/発熱 ⇒肺炎(これは膵臓がんとは関係なし)

⇒そのとき受けた 検査  レントゲン、心電図、血液検査(この血液検査がきっかけで、後日膵臓がんと判明しました)

⇒症状は肺炎だったが、念のため受けた血液検査で「唾液腺」「膵臓」どちらかが悪いと高くなる血清アミラーゼ値が悪かったので、医師の勧めもあり後日市民病院で詳しく検査することに。

 

■12月中旬~ 市民病院で詳しく検査。膵臓がんとわかり、手術。

予約をしてから10日後、4日に渡りドドッと検査しました。

 検査  市民病院にて、血液検査
 検査  超音波(エコー)、MRI
 検査  CT造影 ⇒結果、膵臓がんの疑いがあると判明。医師と面談する。
 検査  PETCT

検査の補足

超音波検査:一般的な膵臓の検査で用いられる。ただし内臓脂肪や消化管ガスが邪魔をしてしまい感度が低い。2cm以下の膵臓病変では50~60%、1cm以下だと30%程度。

MRI:磁気を使用し、画像として描き出す精密検査。

CT造影:X線と造影剤を使用し、画像として描き出す精密検査。

PETCT:がん細胞がブドウ糖を過剰に使うことから、放射性ブドウ糖液を注射し、その取り込みの分布を観察しがん細胞の位置を検出する検査。

入院することになる。 ※このとき体重47kg(元々55kgくらいの人でした)

入院して3日で手術。8時間かかって終了。

そのままICU(集中治療室)に一泊。
翌日一般病棟へ。入院生活が始まる。

 

 薬  ベサコリン散、ガスモチン散、ベリチーム顆粒、ランソプラゾールOD、リパクレオン顆粒

薬の説明

ベサコリン散:よく手術後に使われる、胃腸の働きを活発にする薬。膀胱を収縮させ排尿を促す。

ガスモチン散:弱った胃腸の動きを活発にする薬(胃腸薬)。食べ物を胃から腸へ送り出すのを助けるので、吐き気や食欲不振、胸やけなどに作用する。

ベリチーム顆粒:消化酵素複合剤。脂肪やタンパク質、炭水化物などの消化を助ける。

ランソプラゾールOD:胃酸の分泌を抑える薬。胃壁が弱っていると胃酸で傷つくため。

リパクレオン顆粒:膵酵素。脂肪やタンパク質の消化吸収を助ける。

 食事   ほぼ液体。重湯、ポタージュ、野菜スープ、リンゴジュース、ノンファットミルクなど

手術2日後から歩く運動開始
4日後から徐々に、背中の麻酔の管、尿管、手首の薬を入れる管を取る。

 

■2015年1月 入院。検査と治療。

背中や胃が痛く、眠れない日々。そして病院食がまずい。

 食事   少し固形に。3分がゆ、豆腐、ゼリー、鶏ささみなど
⇒数日でもう少し固形に近づく。5分がゆ、煮物や焼魚、青菜浸し、果物など

 症状  胃に膨満感。空気がたまっている。下痢、吐き気

 薬  痛くて眠れないときはロキソニンをとんぷくで飲む

 

手術9日後でお腹の傷をとめていたホチキスを取る。

 検査  CT造影 ×2日
 検査  内視鏡検査(胃カメラ)⇒胃から腸への流れが悪かったが、手術した箇所(胃と腸のつなぎめ)が腫れて狭くなっているので、おさまるまで流動食に。

 薬  ベサコリン散、ガスモチン散、ベリチーム顆粒はそのまま。
スクラルファート、ネキシウム(夜だけ服用) に変更。

薬の説明
スクラルファート:胃の粘膜を保護する薬。
ネキシウム: 胃酸の分泌を抑える薬。

 

 検査  CT造影 ×2日
症状  造影後、嘔吐、発熱(38.6℃) ⇒膵炎だった。とにかく点滴で水分を入れた。

 

中期(在宅期間前半、抗がん剤など)

中期(在宅期間前半、抗がん剤など)

2月~3月(膵臓がん発見から3~4カ月後)の様子です。

 ■2月 退院。在宅で様子をみる。

退院。熱が出たり、食事が固形になったかと思えば流動食になったりしたことで、退院時期がだいぶ伸びた。

 薬  スクラルファート、ベサコリン、ベリチーム、モサプリドクエン酸、ネキシウム、フェロベリン

薬の説明

モサプリドクエン酸:ガスモチンのジェネリック。弱った胃腸の動きを活発にする薬(胃腸薬)。食べ物を胃から腸へ送り出すのを助けるので、吐き気や食欲不振、胸やけなどに作用する。

フェロベリン: 抗菌作用をもつ下痢止め。大腸菌や、抗生物質が無効な菌に有効で、腸内細菌によって引き起こされた腸内腐敗、それに伴う下痢に作用する。

2週間に1回診察、2~3ヶ月に1回検査で通院。

 検査  血液検査 ⇒異常なし ※体重41kg

 症状  足首にむくみが出てくる(特に夜) ※体重42kg
 症状  食後、ダンピングがひどくなってくる、日中だるい

 

■3月 在宅で様子をみる。抗がん剤をやってみる。

抗がん剤は医者は早く早くと勧めたけれども、最初は断り、悩んだ末に始める。
副作用はだるさ、下痢といったところ。ダンピングはずっとひどい。

 薬  抗がん剤TS-1開始(19日間)朝晩2錠ずつ5投2休(5日飲んで、2日休む)闘病中気を付けること参照!

 症状  特に目立った症状なし。多少だるくなる程度。

 

後期(在宅期間後半、腹水や緩和ケアなど)

後期(在宅期間後半、腹水や緩和ケアなど)

4月~7月(膵臓がん発見から5~8カ月後)の様子です。

■4月 抗がん剤をやめる。在宅で様子をみる。

ダンピング(下痢)が続き、体重が減少止まらず。栄養不良状態のため体が持たないと判断し、抗がん剤を中止する。下痢はアヘンチンキで対応し始める。

 薬  抗がん剤TS-1中止(下痢が続き体重減少が止まらないため。効果があったのかは不明)、ロペラミド追加 ※体重39.7kg

薬の説明

ロペラミド:下痢止め。腸の運動を強力に抑え、腸管での水分の吸収を増やす。対症療法のため下痢の原因を治すわけではない。 

 症状  胃が張る、嘔吐

 薬  スクラルファート、モサプリドクエン酸、リパクレオン、ネキシウム、フェロベリン、ロペラミド に変更

近所の診療所にて点滴
 薬  六君子湯、栄養剤

薬の説明

六君子湯:胃腸の働きをよくして、水分の停滞を改善する漢方薬。胃もたれ、吐き気、食欲不振、お腹のゴロゴロ、軟便に作用する。 

 検査  単純CT、CT造影 ⇒新しいガンはなかった。多少リンパに腫れあり。

 症状  下痢がひどい
 薬  アヘンチンキ(1.5ml/日)、リパクレオン、六君子湯、ネキシウム、栄養ドリンク

薬の説明

アヘンチンキ:強い痛みを抑え、下痢を止める医療系麻薬。 

 症状  胃が張る、嘔吐 ×2日 ※体重41kg(下痢、嘔吐が続いているにもかかわらず体重が増えている

 

■5月 在宅で様子をみる。腹水がひどくなってくる。

体重が少なく、疲れやすい。午前中体調がよくても、午後にガクンと悪くなることが増えた。その逆もあり、波がある。腰痛がひどくなってきたので、体操で対応。

 症状  耳鳴り、腰痛、だるい(旅行に行ったので、その疲れによるためか?)

 看護  接骨院で腰痛に効く体操を教わる ※体重41.5kg

 症状  足むくみ、だるさ、腹の張り
 症状  腹水がひどい ※体重45kg(急に増えた5kgは腹水によるもの)

 薬  利尿剤(フロセミド、スピロラクトン)、ロキソプロフェン(腰痛用)

 

■6月 在宅で様子をみる。

腰痛が常にある状態になる。ロキソニンを飲むと短時間おさまるが、医者に相談したところ麻薬を処方された。飲んだら副作用がひどすぎたため、ロキソニンより強く、麻薬より弱い鎮痛剤で体に合うものを探す。闘病中気を付けること参照!

 症状  腰痛がひどい

 薬  オキシコンチン、オキノーム散

薬の説明

オキシコンチン:強い痛みを抑える麻薬系の強オピオイド鎮痛薬。長く続く鈍痛、一般の鎮痛剤が効きづらいがん性疼痛に用いられる。1時間以内に効き始め、12時間持続する。錠剤またはカプセル。

オキノーム散:オキシコンチンの粉薬。15分以内に効き始める即効性のある鎮痛薬。 

 

 薬  トラムセット(オキシコンチンが合わなかったので変更)

薬の説明

トラムセット:2種類の有効成分からなる鎮痛薬。麻薬と一般薬の間に位置する強さの薬。一般薬よりも鎮痛効果が早く出現し、強く効き、持続時間が長いのが特徴。しつこい腰痛などに用いられる。

 

 薬  セレコックス(トラムセットが服用すると眠くなるので変更)

薬の説明

セレコックス:炎症を鎮めて、腫れや痛みを抑える鎮痛薬。 ただし、長期使用における心血管系への悪影響が懸念される。

 

 症状  左脚のふくらはぎがパンパンにむくむ ⇒闘病中気を付けること参照!

 薬  セレコックスを中止(脚に血栓ができたため)

 薬  ボルタレンサポ、ナウゼリンOD錠、ナウゼリン坐剤追加

薬の説明

ボルタレンサポ:腫れや痛みを抑え、熱を下げる座薬。

ナウゼリン:胃腸の働きをよくし、吐き気、嘔吐、食欲不振に用いる薬。

 看護  介護保険面談
 看護  緩和ケア待機決定

 

■7月 在宅で様子をみる。体調悪化、緩和ケアに入る。亡くなる。

片足だけがパンパンになるのは、長時間座っていて血栓が出来ていたため。(エコノミー症候群)すぐさま検査・手術することに。だんだんと体力がなくなり、亡くなる1週間前から立ち上がれなくなってくる。亡くなる3日前には寝返りが打てなくなった。前日は元気。

 検査  単純CT、造影CT 左脚ふくらはぎに血栓ができたのでエコー検査。

⇒血栓が肺にとぶ、肺塞栓症とエコノミー症候群による突然死の可能性があるとの診断。

即手術。(下大静脈フィルター留置術)30分で終了。

⇒検査の結果、切除した部分に新たにがんが出来ている可能性あり。
膵管と胆管の元の部分が太くなっていて、先端部分が詰まっている。

 看護  夜、腕以外動かすことができなくなり、緩和ケアへ入院

3日後、亡くなる。(前日は自分で首をかなり持ち上げられるほどに元気になったが、最後の日はずっと寝たまま目を開けられなかった。)

 

闘病のなかで気を付けたほうがよいこと

母が闘病するなかで、当時は全く気づけなかった、今だからわかることがあります。

1)抗がん剤への考え方

抗がん剤は体へのダメージが大きい。「この抗がん剤で絶対治す!」と思っているなら良いと思いますが、「試す」くらいならその後の体のことを考えると、やらない方がいいと思います。

また、「白血病など血液系のがんには効果が高い(といっても50%程度の人が延命する=完全緩解ではない)」「進行がんには20%程度の人に1~2ヶ月の延命効果」という、これほど体を弱らせるにも関わらず効果が出ない抗がん剤の現状を見て、やるかやらないかを決めてほしいです。

2)処方される薬はまず疑う

医者が出した薬は、万能薬ではない。必ず副作用を確認してほしいです。特に飲む薬が増えてくると、なにがなんだかわからなくなりますが、突然出てくる症状は薬のせいかもしれませんので、そんな時はよーくチェックしてください。

また、診察時うまく痛みや症状が伝わっていない(医者が軽く・重く見てしまっている)ことがあり、症状に合っていない薬が処方されることも。「変!」と思ったら飲み続けずに相談してください。我慢なんていりません、体が一番大切です。

母の闘病中の例①
6月、腰痛があると医者に伝えたところ、ロキソニンで治まる程度にも関わらずオキシコンチン(麻薬)を処方された。(がん性疼痛と考え、強い薬を出したのだろう。)飲んだところ、日中ずっとひどい眠気に襲われ、だるさで起きていられなかった。そして薬の効き目が切れる頃には腕がイガイガし(ムズムズ症候群のような感じ)体を小さくしてうずくまる形で1時間ほど動けなかった。これを機に、オキシコンチンを飲むのをやめ、鎮痛剤を他の医者と相談しながら切り替えることにした。 

3)エコノミー症候群に気を付ける

体力、筋力がなくなってくるとだんだん座りっぱなしでいることが多くなります。筋力がないと足がむくみやすくなりますが、特に片足だけパンパンにむくむのは要注意!血栓ができている可能性があり、放っておくと肺に血栓が飛んで突然死に至ります。足を上げたり、イスに座りっぱなしでいないよう気を付けてください。

母の闘病中の例②
7月、足が片方だけむくむのはおかしいということで、別の医者に血液検査をしてもらったところ、血栓ができている可能性があると指摘してくれた。すぐさま大病院でエコー検査をし、血栓が飛んでしまっても体の中心にある大静脈でキャッチする「下大静脈フィルター留置術」という手術を行った。

エコー検査をする前は「腹水のほうが気になる、むくみは大丈夫大丈夫」と言っていた元々の担当医が、検査後血栓が見つかったらすぐに手術を、と言ってきた。それくらい、エコノミー症候群は危険。