味が変だなと思ったら、味覚障害を疑え!

味が変だなと思ったら、味覚障害を疑え!

がん治療における副作用

がんの治療では、副作用が起きてしまうことが往々にしてあります。

例えば、抗がん剤を飲むことで吐き気が引き起こされたり、下痢や便秘、はたまた口内炎ができてしまったり、人によって様々な副作用が起こります。

今日は、その副作用のひとつ「味覚障害」について詳しく見ていきたいと思います。

味覚障害は、治療の効果に直接影響がないため見過ごされやすい副作用です。

しかし症状が長引けば、食欲不振に陥り栄養状態が悪くなり、治療の妨げになることもあります。

また本来楽しいはずの食事が思うように出来ないのは、精神的にもよくありません。

前向きに治療に取り組むためにも、味覚障害への対処法を知っておきましょう。

前向きな治療

 

味を感じる仕組み

まず始めに、味がどのようにして伝わっているのかについて簡単に説明したいと思います。

基本的な味には、塩味、酸味、苦味、甘味、うま味の5つがあります。

味が変だなと思ったら、味覚障害を疑え! 味を感じる仕組み

味を感じる仕組み

これらの味は、口に食べ物が入った時に、味蕾(みらい)という舌の表面などにある味を感じる器官に味覚として感知されます。

ただし味蕾が味を感知するためには、水分が必要です。

スープなどの汁物は水分なので味蕾が味を感知できますが、水分を多く含まない食材の味は唾液の水分と混ざることで味蕾に感知されます。

そして唾液の水分を介して味蕾が感じた味覚は、神経を通り大脳の味覚中枢へと伝わります。

 

味覚障害とは

味覚障害は、大きく分けて2つあります。

①味を感じなくなる

味覚障害が起きると味覚の感度が低下してしまうので、先ほど触れた塩味、酸味、苦味、甘味、うま味などを感じづらくなったり、全く味がしなくなることも。

あるひとつの味だけがしなくなる場合もあります。

②異常な味を感じる

口の中には何もないのに渋み、苦み、塩味などを常に感じる。

何を食べてもまずく感じてしまう。

このような本来と違う味がするのも味覚障害です。

味覚障害症状

 

なぜ味覚障害になるのか?

亜鉛不足

舌の表面などにある味を感じるための器官である味蕾は、新陳代謝が早く3~4週間という短いサイクルで新しい細胞に生まれ変わっています。

しかし亜鉛が不足すると、味蕾の新陳代謝が起こりにくくなり、味覚障害があらわれます。

亜鉛不足

 

加齢

年を取ると、味蕾の数が減少します。

高齢者の味蕾の数は、新生児の3分の1とも言われています。

また年と共に、唾液分泌の低下も引き起こされ、味を感じにくくなることがあります。

 

鼻づまり

風邪などで鼻づまりすると、味が分からなくなることがあります。

口からは味、そして鼻からはにおいを感じて、それらを脳が1つに統合し味覚を感じています。

つまり味覚と嗅覚は密接な関係にあるというわけです。

よって、鼻づまりなどで嗅覚が機能していないと味を感じにくくなります。

 

舌苔(ぜったい)

舌の表面には、舌苔と呼ばれる白い苔のようなものが付いています。

これは、舌の細胞がはがれたもの、食べ物のカス、白血球の死骸、細菌などです。

ストレスが強くかかった時や風邪の時には、この舌苔が厚くなったり色が変わることがあります。

そのような時には、味覚障害が起きやすくなります。

 

病気による味覚障害

舌炎や口内乾燥症(ドライマウス)といった口腔内の疾患から味覚障害があらわれることもあります。

口腔内の病気のみならず、貧血や消化器疾患、糖尿病、肝不全、腎不全、甲状腺疾患なども味覚障害を招きます。

また顔面神経麻痺や脳梗塞・脳出血、聴神経腫瘍、糖尿病などは、味覚を伝える神経回路に異常が起き、味覚が正常に伝わりません。

 

薬の副作用やがんの治療

降圧薬や精神疾患薬、鎮痛・解熱薬、抗アレルギー薬、消化性潰瘍治療薬などといった薬の副作用によって味覚障害が引き起こされる場合もあります。

また今回の記事の主題でもあるがんの治療でも味覚障害は発生します。

化学療法を受けている人の3~5割の人が味覚障害を感じ、頸部から頭部にかけての放射線治療においてはほとんどの人が味覚障害を起こします。

薬による味覚障害

 

心因性のもの

うつ病や精神的なストレスで味覚障害が起きることもあります。

またその治療で使われる抗うつ薬などが味覚障害を引き起こしている可能性もあります。

 

がん治療による味覚障害

ここからは、がん治療における味覚障害について見ていきたいと思います。

抗がん剤による味覚障害

口腔内粘膜や舌

抗がん剤を使用すると、様々な要因によって味覚障害が起きます。

ひとつは、口腔内粘膜や舌への障害です。

粘膜障害が出ると、口腔内の粘膜があれて口内炎などができたり、炎症を起こし痛みを感じます。

また舌への障害が起こると、舌の表面にある味を感じる細胞である味蕾の機能低下が起こり得ます。

味を感じる器官へ障害が生じることにより、味覚障害が起きます。

この粘膜や舌への障害は、5-FU(一般名:フルオロウラシル)系の抗がん剤で起きやすいとされています。

 

神経

脳に味を伝える神経への障害でも、味覚障害は起きます。

  • タキソール(一般名:パクリタキセル)などのタキサン系
  • シスプラチンなどのプラチナ系
  • 悪性リンパ腫に使われるオンコビン(一般名ビンクリスチン)

これらの抗がん剤などは味を伝える神経を妨げ、味覚を感じにくく、もしくは感じなくさせてしまいます。

 

味蕾(みらい)

味蕾自体も抗がん剤によってダメージを受けます。

前に触れたように味蕾は3~4週間という短い期間で生まれ変わります。

抗がん剤はがん細胞という分裂の速い細胞を攻撃するため、同様に分裂の速い味蕾もダメージを受けやすいのです。

また味蕾の再生には亜鉛が必要なのですが、抗がん剤が亜鉛の吸収の妨げになるため、新しい味蕾の細胞が作られにくくなってしまいます。

そのため上記で挙げた抗がん剤以外でも、味蕾の味細胞がダメージを受け感度が落ちたり、新しい味蕾の細胞が少なくなることによって味覚障害を起こすことがあります。

 

味覚障害を起こす可能性のある薬剤

一部ではありますが、以下が味覚障害を起こす可能性のある薬剤です。

  商品名(一般名)
抗がん剤 5-FU(フルオロウラシル)
TS-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)
タキソール(パクリタキセル)
カンプト、トポテシン(イリノテカン)
ゼローダ(カペシタビン)
エンドキサン等(シクロフォスファミド)
タキソテール(ドセタキセル)
オンコビン(ビンクリスチン)
UFT(テガフール・ウラシル)
エルプラット(オキサリプラチン)
ブリプラチン、ランダ等(シスプラチン)
パラプラチン(カルボプラチン)
メソトレキセート(メトトレキサート)
ホルモン剤 アフェマ(塩酸ファドロゾール水和物)
アロマシン(エキセメスタン)
リュープリン(酢酸リュープロレリン)
解毒剤 アイソボリン(レボホリナートカルシウム)
催眠鎮静剤 メイラックス(ロフラゼブ酸エチル)
ハルシオン(トリアゾラム)
解熱鎮痛剤 ボルタレン(ジクロフェナクナトリウム)
医療用麻薬 オキシコンチン(塩酸オキシコドン)
利尿剤 ラシックス(フロセミド)など
降圧剤 カプトリル(ACE阻害薬)など
抗パーキンソン薬 ドパストン(レボドパ)など
抗うつ剤 ノリトレン(ノルトリプチリン塩酸塩)
トリプタノール(アミトリプチリン塩酸塩)
トレドミン(ミルナシプラン塩酸塩)など
肝疾患治療剤 チオラ(チオプロニン)など
抗アレルギー剤 ニポラジン(メキタジン)
ザジテン(ケトチフェン)など
抗甲状腺剤 メルカゾール(チアマゾール)など
痛風治療薬 ザイロリック(アロプリノール)
抗生物質 ミノマイシン(ミノサイクリン塩酸塩)など
抗てんかん剤 テグレトール(カルバマゼピン)など
高脂血症剤 ベザトールSR(ベザフィブラート)など

 

膵臓がんに関して言えば、TS-1はよく使われる抗がん剤ですし、5-FU(フルオロウラシル)・カンプト(イリノテカン)はFORFILINOXに入っており、タキソール(パクリタキセル)はゲムシタビン+nab-パクリタキセルに入っています。

また痛みがある方は、医療用麻薬オキシコンチンを使われる方もいるかもしれません。

▼抗がん剤について詳しくはこちら

転移・再発して「切除不能な膵臓がん」に使用する抗がん剤を解説!

2016.09.26

膵臓がんを「切除できた後」に使用する抗がん剤を解説!

2016.09.26

 

放射線治療による味覚障害

唾液分泌の減少

唾液には、食物と混ざり水分を含ませ味蕾に味の成分を運搬する役割もあります。

つまり唾液のおかげで、食物の味を感じているわけです。

しかし放射線治療で、耳の下やのど周りにある3大唾液腺(耳下腺・顎下腺・舌下腺)が照射野に入る時、唾液の分泌が減少し、味を感じづらくさせます。

この時、味覚障害を生じることがあります。

味が変だなと思ったら、味覚障害を疑え! 放射線治療による味覚障害

3大唾液腺の位置

 

味蕾の減少

放射線治療の副作用として、味蕾の減少が動物実験では確認されています。

そのため、口腔内や咽頭部以外の放射線治療によっても味蕾が減っていると考えられています。

口腔内や咽頭部への放射線では、放射線量が増すごとに、味蕾の数は減少します。

 

亜鉛不足

治療中の亜鉛不足でも味覚障害を招く恐れがあります。

吐き気などによって食事を摂取できないことから、亜鉛不足になる可能性があります。

また亜鉛の吸収を阻害する薬剤(降圧薬、脳循環改善薬、抗腫瘍薬、抗うつ薬など)を長期連用・併用することで、尿から多くの亜鉛が排泄されてしまうために亜鉛不足となります。

このように治療に関わることで亜鉛不足になり、味を感じないまたは感じにくくなってしまうこともあります。

 

心因性

がんになると、とても大きな不安やストレスを感じることが多々あります。

そういった不安感やストレスために味覚を感知しなくなってしまうこともあります。

心因性

味覚障害を放っておいてはいけない理由

確かに味覚障害は、直接的には治療の効果に影響がありません。

そのために対処が後手に回ってしまうこともあるかもしれません。

しかし、味覚障害を侮ってはいけません。

味覚が正常でなければ、食事を摂るのが苦痛になってしまうでしょう。

そうすれば、いずれ体の栄養状態が悪くなり、がん治療に問題が生じるはずです。

国立がん研究センターによれば、化学療法を受けている人には、基礎代謝の1.5〜2.0倍のエネルギーが必要ともいわれており、健康時よりも多くのタンパク質やエネルギーの摂取が必要になるとのことです。

食事摂取をきちんとするためにも、対処法を知っておきましょう。

次のページで対処法についてと、味覚障害の研究について解説します。⇒

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