緩和ケア病棟ってどんな所?対応、雰囲気、料金など

緩和ケアとは

緩和ケア病棟についてお話しする前に、緩和ケアについて少しまとめたいと思います。

 

以前、緩和ケアについてまとめた記事がありますので、お時間ある方はこちらも読んでみてください。

誤解してる?緩和ケアの基本

2016.06.26

 

上記の記事内容を簡単にまとめます。

まず緩和ケアとは、患者さんやご家族のつらさを楽にして、生活の質を上げてくれる治療のことを言います。

決して終末期だけに行われる治療ではありません。

緩和ケアは、患者さんが苦痛(身体的、精神的、社会的苦痛、スピリチュアルペイン)を感じた時に行う治療なので、診断した時から必要に応じて受けます。

 

また緩和ケアは、医師、看護師、薬剤師、栄養士などからなる緩和ケアチームが行います。

身体的に痛みが出た時には薬剤師が薬を出してくれたり、精神的に落ち込んでしまったら臨床心理士が話を聞いてくれたり、就労の問題を抱えているならソーシャルワーカーが相談に乗ったりします。

 

そして緩和ケアを受ける方法は、4つあります。

  1. 緩和ケアチームのいるがん診療連携拠点病院を受診する
  2. 緩和ケア外来を受診する
  3. 緩和ケア病棟に入院する
  4. 自宅で緩和ケアをする

 

抗がん剤など根治に向けた治療もしながら緩和ケアをしたい場合は、①、②、④を選びましょう。

 

今回は3番目の「緩和ケア病棟」についてご紹介していきたいと思います。

 

緩和ケア病棟ってどんな所?

緩和ケア病棟とは、緩和ケアを専門的に提供する病棟です。

名称としては緩和ケア病棟、ホスピス、緩和ケアセンターなどと呼ばれることが多いです。

緩和ケア病棟では、一般病棟や在宅ケアでは対応困難な心身の苦痛がある患者への対応を、緩和ケアの専門的な知識・技術をもった医師がしてくれます。

 

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ここからは、さらに詳しく見ていきます。

 

対象となる患者さん

どんながん患者さんが入院するのかと言うと、以下のような方が対象となっています。

  • 悪性腫瘍(がん)の進行に伴う何らかの苦痛症状があり、その症状を緩和するために入院を必要としている患者さん。
  • がんの治癒を目指した抗がん剤投与などの治療が困難であるか、もしくは希望されない患者さん。

 

緩和ケア病棟によっては、以下のような条件が付く場合もあります。

  • 患者さん本人が入院を希望している。
  • 患者さんが病名・病状を理解している。

 

以下のような方は対象外です。

  • 介護が入院の主な目的の場合。
  • 他の患者さんの迷惑になると判断された場合。

 

治療について

緩和ケア病棟では、抗がん剤治療などのがんを根治させる治療はしません。

そのような治療はしませんが、病状の進行による苦痛症状の緩和を目的とした医療が行われます。

一般的には、レントゲンや血液検査、輸血、点滴など全身状態を維持するために必要な検査や治療は行います。

また必要に応じて、症状緩和のための外科的治療や放射線治療が行われることがあります。

 

そういった痛みなどの苦痛を和らげる治療は、緩和ケアチームが行います。

緩和ケアチームの主な構成

緩和ケアチームの主な構成

緩和ケア病棟の場合は、苦痛を和らげることが最優先されますので、リハビリ専門職の方がチームにいない場合などがあります。

 

民間療法、代替療法などの効果が明確でない治療に関してですが、これは病院ごとに対応が違います。

持参したものなら自己責任でやってもいいという病院と、入院中は受け入れないという病院があります。

しかし、どの病院も医療者から勧められることはありません。

もしもそのような療法を行いたい場合は、持参したものが使えるかどうか相談してください。

 

また多くの緩和ケア病棟では、心肺蘇生などの延命処置をしません。

延命処置をすることで、逆に苦痛が長引いてしまうということが明らかになっているそうです。

苦痛を取り除くための病棟である緩和ケア病棟で、延命処置はしない方針の病院が多いのはこういった理由だと考えられます。

 

施設について

基本的な設備は以下です。

 

病室

大部屋の場合もありますが、ほとんどの病院では他の患者さんを気にしなくていい個室を用意しています。

一般病棟よりも、より自宅により近い環境と言えると思います。

病院によりますが、無料の個室を用意している緩和ケア病棟もあります。

がん研有明緩和ケア病棟

がん研有明病院の緩和ケア病棟

写真は、がん研有明病院の緩和ケア病棟の病室です。

がん研だから特別キレイというわけではないと思います。

私たちの母が使っていた病棟の個室とよく似ています。

個室によっては、ソファがベットになり、家族が部屋に一緒に泊まれる病室もあります。

 

デイルーム(多目的ラウンジ)

患者さんが家族と過ごしたり、病棟のイベントを行うなど、くつろぎのスペースです。

がん研有明緩和ケア病棟デイルーム

季節ごとのイベントなどが行われるデイルーム

 

家族用キッチン

ご家族が利用できるキッチンです。

患者さんのために調理もできるように、調理器具やお皿などもそろっています。

がん研有明緩和ケア病棟家族用キッチン

使うにあたりルールがあるので、必ず従いましょう。

 

家族控室

ご家族との時間を有意義に過ごしてもらうために、ご家族が宿泊できる部屋があります。

それが家族控室です。

宿泊以外にも、家族水入らずで過ごしてもらう部屋としても使えます。

がん研有明緩和ケア病棟家族室

宿泊するにあたり、寝具代として1000円弱を徴収する病院が多いよう。

 

その他

上記以外に、シャワー室や介護浴室(寝たままの状態で入浴できる)があります。

病院によっては、他に電話室があったり、洗濯機などが用意されている緩和ケア病棟もあるようです。

 

入院中の生活について

入院中の生活が分かりやすく説明してあったので、岡山赤十字病院の緩和ケア病棟の入院案内のパンフレット(PDF)の一部をお借りしました。

 

入院中の生活

入院中の生活

 

あくまで一例にはなりますが、このような形で生活します。

 

緩和ケア病棟では、夜の間も看護師さんが居て病室を見回ってくれます。

寝返りができず褥瘡(床ずれ)の心配がある方でも、看護師さんが時々来てくれて体勢を変えてくれるので安心です。

看護師数も一般病棟より多いため、手厚い看護を受けることができます。

何より緩和ケアの専門的な知識や技術を持ったお医者さんや看護師さんたちから24時間ケアを受けられるので、安心できます。

 

面会について

家族の面会についてですが、ほとんど制限はありません。

私たちの母がいた緩和ケア病棟でも、24時間いつでも面会可能でした。

しかし感染予防のために、体調が優れない方は面会はご遠慮ください。

 

料金について

厚生労働省から「緩和ケア病棟」として承認を受けた病棟に入院して緩和ケアを受ける場合、医療費は定額制(治療内容に関わらず1日の医療費が一定額に決められている)となっています。

以下の図をご覧ください。

1日あたりの緩和ケア病棟の医療費

10円未満四捨五入として端数処理しています。

 

医療費は、入院日数ごとに金額が違います。

また医療保険が1割負担か3割負担かによって金額が変わってきます。

 

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上記の図は、あくまで例なのですが、入院費用の基本は「医療費×入院日数」です。

また医療行為があった場合には、その金額も上記以外に支払う必要があります。(医療保険適用)

それに加え、食事療養代、有料の個室代、文書料が別途必要になります。(こちらは医療保険適用外)

 

医療保険が適用できる料金には、高額療養費制度が使えます。

高額療養費制度とは、1ヵ月の医療費の自己負担額が一定額を超えた場合、超えた分の払い戻しをご加入の医療保険から受けられる制度です。

詳しくはこちら 医療費の経済的負担を軽減できる制度について 緩和ケア.net

 

退院について

以下のような場合には、退院することになっている緩和ケア病棟が多いようです。

  1. 患者さんが退院を希望されるとき。
  2. 悪性腫瘍(がん)の縮小あるいは治癒を目標とした治療を希望されるとき。
  3. 悪性腫瘍(がん)以外の病気があり、その治療を優先する必要があるとき。
  4. 苦痛症状が緩和され、病状が安定したとき。

 

これを見て分かるように、一度入院したからと言って退院できないわけではありません。

むしろ症状が強い時期には緩和ケア病棟で緩和治療を行い、苦痛症状が緩和されたら自宅に戻り、在宅療養をしながらがんの根治を目指すこともできます。

 

もし亡くなった時の対応

最後に残念ながら亡くなってしまった時のことをお話ししておきたいと思います。

上記にも少し書きましたが、延命処置はしません。心肺蘇生も呼吸器も付けません。

医師や看護師は息の様子を看るだけで介入はしません。

なので、自然に息を引き取るのを家族が看取ることができます。

亡くなったあとは、体を綺麗にしてくれます。

その後、母の時は退院する際に、看護師さんたちが深くお辞儀をしてくれました。

退院した後も、翌年にはがきで連絡をいただきました。

このように、亡くなった後も家族のことにも気を使ってくださる緩和ケア病棟は多いようです。

 

 自宅のような緩和ケア病棟

以上が緩和ケア病棟の概要になります。

全ての緩和ケア病棟がこれと同じではないことをご了承ください。

あくまで1つの目安と思って参考にしていただければ幸いです。

 

緩和ケア病棟にいるお医者さんや看護師さんたちは、苦痛を緩和するプロです。

母が入院した時に、私はそう思いました。

また緩和ケアチームが、様子を診ながら今後の計画を立ててくれます。

これも安心できます。

だからと言って、病院のようかと言えば違います。

プライバシーも一般病棟よりも守られているので、自宅のようです。

緩和ケア病棟は入ってみるまでイメージしにくいとは思いますが、この記事を読んでもらうことで、一歩を踏み出して緩和ケア病棟を利用してくださればと思います。

 

参考資料

緩和ケアについて知ろう がん情報みやぎ

CASE2【入院・緩和ケア病棟】 緩和ケア.net

ホスピス緩和ケア病棟Q&A 特定非営利活動法人ホスピス緩和ケア協会

がんの療養と緩和ケア がん情報センター

がん診療について 緩和ケア病棟について 日本赤十字社 伊勢赤十字病院

緩和ケア病棟 宮城がん県立センター

緩和治療科のご案内 がん研有明病院

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6 件のコメント

  • 緩和ケアの記載、本当にありがとうございます。より一層理解できました。もっと早く正しい理解をした上でアクションを起こせば良かったと思いました。今、一生懸命アクション中です(^.^) 感謝いたします。

  • 森様

    ご丁寧なコメントありがとうございます。
    私たちも微力ながらお手伝いさせていただきますので、また何かあればご質問ください(*^^*)

  • いつもコメントに適切なお返事をいただきありがとうございます。このサイトに出逢わなければ、1人四苦八苦状態です(^_^;) もしよければもう一つだけ! 訪問看護と訪問診療について。
    さいたまには緩和ケア病棟のある病院が少なく、今、予約待ちなんですが、近くで訪問看護、訪問診療をされるすい臓専門の先生がいらっしゃるクリニックを見つけ、今から始める状況です。24時間体制で先生も良くしていただけるので当分はお世話になる様な状況です。何かアドバイスなどありましたら教えて下さい。

  • 森様

    すい臓がん専門の先生が訪問診療してくださるのなら、安心ですね!
    事前に訪問医と話し合っておいた方がいいのは、どのように自宅で過ごしたいかなどの希望(治療方針)と、緊急時の対応について確認だと思います。

    あと介護保険の申請はなさっていますか?
    介護保険を使うと、介護用ベットなどが安く借りられますよ。(申請の段階で介護保険は使えます。)
    詳しくはこちらをご覧ください。
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    • 早々に対応していただきまして、ありがとうございます。
      感謝しきれません。ありがとうございます。

  • 森様

    とんでもないです。
    このサイトが役に立っていることが何よりです。
    また何かあれば、いつでもどうぞ。

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