現在、がんの生存率の統計を発表している主な機関は2つあります。
- 国立がん研究センターより「地域がん登録(21県644,407症例)」から
【2006-2008年】集計の5年生存率 - 全がん協(全国がん(成人病)センター協議会)より「登録された32施設」から
【2004-2007年】集計の5年生存率、【1999-2002年】集計の10年生存率※2018年現在、サイトが変更されています。自分で検索するタイプになっています。
が集計され、公開されています。
膵臓がんはどの癌よりも生存率が低いのは事実ですが、この数値に安易に落胆すべきではなく、正確に生存率を読み取る必要があります。
まずは生存率の見方について解説します。
5年、10年生存率が使われる理由
この「生存率」の統計が取られている目的は、全がん協や国立がん研究センターのサイトにもあるとおり、医療実績の尺度として使われています。
診断から一定期間後に生存している確率を生存率といい、がん医療を評価する重要な指標のひとつです。
出典:生存率Q&A 生存率って何ですか? | 全がん協加盟施設の生存率共同調査(サイトが変更されリンク先ページはなくなりました)
あるがんと診断された場合に、治療でどのくらい生命を救えるかを示す指標。
このことからも分かるように、「特定の病院の治療(当時の標準治療)をしたとき」にどのくらいの割合の人が5年間(または10年間)延命できるのか、という医療者視点の情報です。
実際に治療は何を選ぶのか、それとも選ばないのか・・・によって、この統計は参考になったり、ならなかったりします。(当時と全く同じ治療法・統計的に多いがんの状態かつ進行度合いなら参考になるかもしれません)
まずその点をご留意ください。
大抵のがんは、5年が目安
がんについては、5年以上経ってから転移がんが発見されるのは稀なため、「5年」が治癒した目安として考えられています。
そのため5年生存率を用いて、治癒した割合を集計しています。
しかし、膵臓がんについては1年経たずに再発することも多く、また現在十分な治療法も無いため5年生存率の数値が悪くなっています。
がんの種類によっては10年生存の割合も高くなり、2016年に初めて10年生存率が発表されました。
集計されているのは「生存している割合」のため、再発している場合も、生存しているとカウントされるので、治療中の方も含まれています。完治・完解の割合ではありません。
統計を見る前提1)現在の生存率ではない
たとえば全がん協の集計期間をよく見ていただきたいのですが、
5年生存率は「2004~2007年にがんと診断された人=2009~2012年までの生存率」、
10年生存率は「1999~2002年にがんと診断された人=2009年~2012年までの生存率」です。
現在は2016年ですので、5年生存率は最大12年前にがんと発覚した人、10年生存率は最大17年前にがんと発覚した人の統計です。医療やケアの発達は早いのに、統計の数値はひと昔前と言わざるを得ません。しかし統計とはそういうものです。
新しく出てきた治療法を行った生存率の統計がわかるのは何年も先です。集計された時期に行われている診断・治療と、現在のあなたのやっている治療はまったく同じではありませんので、この統計結果は参考にはなりますが、全信頼を置く必要はありません。
2016年から始まった「がん登録」のデータが集計・公開されるのは、2022年以降だそうです。
全がん協が提供する統計は、相対生存率での統計のため古い治療を行ったデータとなってしまい、最新の治療結果を反映できませんが、「ピリオド法」という集計方法を取った統計は最近5年間の間に生存期間10年を迎える人の割合をカウントするため、最新の統計情報を得ることができます。
統計を見る前提2)すべての患者の、実際の生存率ではない
癌になる人は全国にいますが、統計を取っているのは、全がん協に登録されている医療機関32施設の診療実績であったり、地域がん登録に登録されたうち統計の基準をクリアした日本の約半分の都道府県の治療実績です。
また、性別や年齢によって生存率が変わってしまい、例えば20代と80代の患者さんの生存率を比較するのは無理があります。(体格・体力・免疫力の違いや、細胞分裂の早さによる進行の早さの違い、その他の病気による死亡の確率など様々な要因があります)
そのため、年齢・性別での差異をならす「相対生存率」という数値の操作が行われていますので、実際の生存率ではない点にも注意が必要です。
自分の現状とぴったり同じ人の統計を調べない限り、近い生存率はわかりません。あくまでも参考です。
相対生存率は、実測生存率(癌の人の実際の生存率)/期待生存確率(同じ性別・年齢の日本人が普通に生きた場合の生存確率)で出しています。
癌以外での死因を除外するために(癌以外=たとえば事故やその他の病気。日本人の20歳の人が100%死なないのならば、20歳で癌で亡くなった場合は他の要因は考えられないため、そのままカウントしてよいですよね、ですが有り得ないので)数値をならしていますが、必ず数値が増えてしまいます。(例:癌の人の実測生存率 40% / 日本人の期待生存確率90% = 約44%といった具合。)
海外との比較にも相対生存率が使われています。
生存率には実測生存率と相対生存率があります。
実測生存率とは、死因に関係なく、全ての死亡を計算に含めた生存率です。この中には、がん以外の死因による死亡も含まれます。
がん以外の死因で死亡する可能性に強く影響しうる要因(性、年齢など)が異なる集団で生存率を比較する場合には、がん以外の死因により死亡する確率が異なる影響を補正する必要があります。性、年齢分布、診断年が異なる集団において、がん患者の予後を比較するために、がん患者について計測した生存率(実測生存率)を、対象者と同じ性・年齢分布をもつ日本人の期待生存確率で割ったものを相対生存率といいます。
出典:生存率Q&A | 全がん協
統計を見る前提3)発生部位や種類は混合されている
膵臓がん(膵がん)といっても、膵頭部、膵体部、膵尾部のどこに発生したものかで生存率が大きく変わるのはご存知の通りです。
そして、癌の種類(外分泌性か、内分泌性か、90%は主膵管から発生する癌)でも悪性度が変わってきます。
これらが区別されずに一緒に統計されていますので、実際の生存期間は統計からは正確に測ることはできません。
ちなみに、発見時にどのステージだったのかは分類されており、手術をした場合の生存率も別途記載されています。
統計を見る前提4)ここからQOLは読み取れない
QOL(クオリティ・オブ・ライフ、生活の質)はこの表に反映されてはいません。
「どのくらい長く生きたか」のみです。
もちろんQOLを高く保ったまま長く生きる人もいますし、反対に、生活が難しくなるような副作用が出ながらも長く生きる人もいます。
人によって、「長く生きること」が大切なのか、それとも「生きるならば質を上げること」が大切なのかは違うはずです。
統計にはそれら全てが含まれていることも忘れてはいけません。
これらを踏まえて、次のページで膵臓がんの5年生存率を詳しく見ていきます→
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