興味深い記事が科学誌Natureで載っていましたのでご紹介します。
あまり意識したことはないかもしれませんが、人間に限らず動物もがんになります。細胞の遺伝子に傷が付くことが原因でがんは発生するので、細胞分裂をする動物は皆がんになる可能性があるわけですね。
しかし、実は「ゾウはがんになりにくい」のだそうです。
(ゾウががんで死亡するのが大体3%程に対して、がん情報センターに掲載されている2011年の日本人の生涯がんで死亡する確率は男性26%、女性16%です)
Petoのパラドックス
そのことに着目したのはオックスフォード大学のRichard Peto氏。
「もしどの動物も同じ確率でがんになる(1つの細胞ががんになる確率が等しい)としたら、小型の動物よりも、細胞の数が多く寿命も長い大型動物のほうが高い割合でがんになるはずだ」という仮説を立てた。
しかし調べてみると、どの哺乳動物も体の大きさに関わらず「同じ割合でがんになった」のです。細胞の数も細胞分裂の回数も多い大型動物は、がんを防ぐ手立てを持っているのではないか・・・この考えは「Petoのパラドックス」と呼ばれ、40年間謎とされてきました。
答えのひとつは「内在性レトロウイルス」
当時わかったのは、体が大きい動物ほど「内在性レトロウイルス」と呼ばれるウイルスの数が少ないということ。
「内在性レトロウイルス」とは感染した個体のゲノム(遺伝子)に出たり入ったりして、ウイルス自身の遺伝子を感染した個体の遺伝子に組み込んで、がんの原因となる変異をもたらすウイルスです。
これが動物が長い進化を遂げる中でそれぞれの遺伝子に組み込まれていったわけですが、その数が多いほどがんになりやすいというわけですね。大型動物は「内在性レトロウイルス」を防ぐメカニズムを持っていたわけです。
記事ではこう書かれています。
「動物が大きな体を進化させるには、がんへの抵抗性も大きくする必要があった」
大型動物は「内在性レトロウイルス」のみならず、様々なメカニズムを使ってがんへの抵抗性を高めていたようです。
ゾウにはがんを抑制する遺伝子が人間の20倍あった
前置きが長くなりましたが、ついに「内在性レトロウイルス」以外の、この謎の答えの1つを見つけたという記事です。
ゾウのゲノムには、がん抑制因子をコードするp53(別名TP53)遺伝子のコピーが、20個もあることが分かったのだ。
この「p53」という遺伝子は、細胞が外的要因や細胞分裂のミスコピーなどでDNAの損傷を受けると活性化し、「p53タンパク質」というものを大量につくります。
この「p53タンパク質」はDNAの損傷を治す遺伝子を連れてきて修復を助けたり、あまりにも損傷がひどければ細胞死(アポトーシス)を引き起こす遺伝子を活性化させて損傷した遺伝子を消去します。
つまりがんの原因となる傷ついた遺伝子を治すか消すかしてくれる、体の防御システムですね。
その「p53」という遺伝子が、人間やその他の哺乳動物は1コピー(2つで1組)に対して、ゾウは20コピーもあったそうです。なんと20倍!
そもそもゾウの白血球は、人間の白血球よりもはるかに損傷したDNAへの反応が高く、すぐにアポトーシスを起こさせて消去してしまうそうです。
人間の場合は生活習慣など外的要因がゾウよりもとても多いので一律に比べることは難しいところですが、まだまだがんに対する対処、予防方法はたくさんありそうですね。今後の応用に期待です。
引用出典:
Nature ダイジェスト Vol. 11 No. 11「大型動物ががんを抑える方法」
Nature ダイジェスト Vol. 12 No. 12「ゾウはなぜ、がんになりにくいのか」
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