膵臓がん手術の病院探しどうやってますか?
膵臓がんを早いうちに見つけられた方は、手術を行うと思います。
なぜなら、膵臓がんの完治が期待できる方法は、手術と言われているからです。
しかし実は、膵臓がん手術は難しいとされています。
特に膵頭十二指腸切除の手術では、胆管や十二指腸なども切除するので、内臓が機能するように回復させる再建が必要で、高難度手術に位置付けられます。
その膵臓がん手術の死亡率は3%と言われています。
つまり、100人手術したら3人も亡くなってしまうのです!
高い死亡率だと言えます。
それなら少なくとも手術が得意な病院を選びたいですよね。
そこで今回は、その病院探しのときに参考にしたいことをご紹介します。
外科手術の症例数
外科手術の症例数が多い病院ほど、治療成績はいい傾向にあるという調査結果が存在します。
厚生労働省では、その結果をもとに診療報酬に格差をつけるように変更したほどです。
そこで外科手術の症例数は、手術が得意な病院を探す際の目安になると思います。
全ての病院が外科手術が症例数を公表しているわけではないのですが、最近は多くの病院のHPなどで公表されているので、見てみるといいでしょう。
膵臓がんの外科手術の症例数
前述したように、一般的に膵臓がんの手術は難しいと言われています。
膵臓がんを含めた難しいと言われている手術の数を、病院ごとに比較した調査があります。
アメリカのメリーランド州にある病院の約9年間に渡る入院データを、3つ(難しい消化器手術における術後の死亡率、入院日数、治療費用を年間経験症例数)に分けて病院ごとに比較した報告があります。
このデータで、対象となった患者さんは4,561人で平均年齢は61.6歳、男性55%女性45%でした。
このデータにおける難しい消化器手術は、入院中の死亡率が5%以上と高かった「食道切除術」、「胃全摘出術」、「結腸全摘除術」、「肝葉切除術」、「胆管吻合術」、「膵頭十二指腸切除術」のことを言います。
また外科手術の症例数は、0症例以下、11-20症例、21-50症例、201症例以上に分けていて、51-200症例に含まれる病院はなかったそうです。
この結果分かったのは、年間経験症例数が201症例以上である病院の方が、経験症例数が少ない病院に比べて術後の死亡率も低く、入院日数も短く、治療費も安かったということでした。
恐ろしいことに、20症例以下の病院では、201症例以上の病院よりも死亡率が3倍高かったのです。
死亡率だけでなく入院日数に関しても、201症例以上の病院では平均14.0日だった一方で、10症例以下の病院では平均16.1日と2日も長い結果でした。
この結果から言えるのは、1年間の外科手術の症例数が多ければ多いほど、患者さんにとって安心できる病院なのではないでしょうか。
膵臓がんの場合は、最低でも15件以上
イギリスでは、病院ごとの年間手術症例数の違いが手術後の死亡率に影響するかどうかを調べました。
対象は、膵臓がんと診断された31973人のうち、手術が適応となった患者2580人。
病院は手術の症例数ごとに、1年間15件未満グループ、15-30件グループ、30件以上グループに分けられました。
この調査結果から分かったのは、1年に30件以上膵臓がんの手術を行っている病院は、1年間15件未満の病院に比べて死亡率が12%低いことでした。
上記の調査から病院の手術症例数が、膵臓がん手術を年間30件以上行っていると安心できると言えるでしょう。
また最低でも、年間15件以上の執刀をしているといいと思います。
手術の得意な病院探し
手術症例数が見れるサイトをご紹介します。
しかも、ジャパンキャンサーフォーラムの膵臓がんセミナーで講義をしておられた東海大学医学部 外科学系消化器外科 中郡 聡夫教授からの最新情報です!(執筆当初該当のサイトが発見できなかったのですが、その後見つかったので8月10日23時追記しました。)
施設の情報は、2015年1月1日~12月31日のものです。(2016年8月現在)
高度技能専門医・高度技能指導医・名誉指導医・修練施設検索 一般社団法人日本肝胆膵外科学会
病院名の後に(施設A)や(施設B)と記述がありますが、症例数の違いです。
施設A:年間症例数50例以上
施設B:年間症例数30例以上
このように分類しているようなので、参考にしてください。
膵臓がんの全国統計ランキング
せっかくなら「在院日数が短い病院ランキング」も知りたくありませんか?
厚生労働省の情報をまとめた病院情報局というサイトがあります。
そのサイト内に、「細かい傷病名と手術・治療方式からランキングを探す」というページがあります。
そこから、平成26年度までの「患者数が多い病院ランキング」(症例数ランキング)に加えて「在院日数が短い病院ランキング」を見ることができます。
このページで、診断分類「消化器系」、傷病名「膵臓、脾臓の腫瘍」を選択します。
そうすると、「患者数が多い病院ランキング」(症例数ランキング)に加えて「在院日数が短い病院ランキング」を見ることができます。
ただしDPC対象病院のみの統計なので、全ての病院の統計ではありません。
入院中に払う医療費の払い方が、今までは出来高制でした。
つまり治療や検査などを行った分だけ支払っていました。
しかし平成15年度から、DPC(包括払い)制度へ変わりました。
これは、厚生労働省によって決められた治療や検査(注射・投薬・処置・検査・画像診断・入院基本料など)は定額になる制度です。
なので、1日何回投薬や注射、画像診断や検査を行っても、1日当たりの医療費は変わりません。
定額以外の治療や検査(手術・麻酔・心臓カテーテル・内視鏡検査・リハビリなど)は、今まで通り出来高制として支払います。
DPC制度とは、「定額(包括払い)+出来高払い=入院中の医療費」という支払い方法のことを言います。(入院中の医療費には、保険適用外の食事代、個室料、文書料なども加わります。)
そして、その制度を取り入れている病院のことを「DPC対象病院」と呼んでいます。
まとめ
膵臓がん手術(特に膵頭十二指腸切除)は難しい手術と言われています。
なので、手術の得意な病院を見つけ出したいですよね。
手術による死亡率の低い病院は、なんと言っても年間の外科手術数の多い所。
年間30件以上行っていれば安心と言えるでしょう。
また最低でも年間15件の手術数はほしいところ。
病院の検索は、「高度技能専門医・高度技能指導医・名誉指導医・修練施設検索 一般社団法人日本肝胆膵外科学会」か「細かい傷病名と手術・治療方式からランキングを探す」からしてみてください。
もし手術を受けることになったら、ご自身やご家族が手術を行う病院はどのくらいの手術数があるのか気にしてみてください。
参考資料
ジャパンキャンサーフォーラム2016 膵臓がんセミナー(後日動画がアップされる予定です)
選択肢が増えた膵がんの抗がん剤治療、手術はより安全に Vol.1
難しい消化器手術は症例数の多い病院・名医で受けるべき! クリンタル
膵臓がん手術を年間30件以上行っているのが名医・いい病院 クリンタル
膵臓がん専門病院一覧(症例数) 特定非営利活動法人パンキャンジャパン
いつも貴重な情報をありがとうございます。はじめて投稿します。でもキノシタさんのすい臓がんカフェでお会いした、バカ建築屋です。
個人的に膵がんさん達blogを追っかけたと云う事を以前tweetしました。膵がん手術の⓪成功率もさる事ながら、①手術実行率、②術後の転移再発率、に病院の特徴があるようです。①は術前検査や開腹後迅速検査で転移捜索して手術を中止する確率。②は殆ど転移再発ない病院から100%転移する病院まで両極が多い印象です。①が厳しければ②が優れてる。一度パンキャンなどで調べて貰った方が患者の為かなと思ってます。
余計な意見でした。申し訳ありません。膵がん手術はハイボリュームセンターに限る。と⓪について名医達がサイトで述べているのは事実ですから、ページを割いて頂き感謝してます。
いつも貴重な情報活用させて頂いてます。
追記頂いた肝胆膵外科学会リストは指導医を探せる非常に重要な情報だと思います。ありがとうございます。
その他新し目の情報として参考になるのは、DPC対象病院の実績で、「病院別 膵臓がん 治療実績」でググルと出てくる病院検索サイトの手術件数、実際に病院決定の参考にしました。
これからも有用な情報よろしくお願いします。
バカ建築屋様
お久しぶりです。
膵臓がんカフェではお世話になりました。
実は今回の記事は、バカ建築屋さんのtweetを拝見して必要な情報だと思い、記事にまとめた次第です。
バカ建築屋さんの分析はとても役立っています。
blogを追いかけて分析された「手術実行率」と「術後の転移再発率」関係性などは大変勉強になりました。これらは、間違いなく病院を選ぶ際の重要な基準になると思います。
しかし、今回はそれらの明確なデータが得られませんでした。
今後セミナーなどで医師などに質問できる機会もあるかもしれないので、意見を聞いてみたいと思います。
またデータのまとめをしてくれそうな(もしくはしている)ところも探していきたいと思います。
DPC対象病院の実績をgoogleで検索すると、信頼性がなかったり評判のよろしくないサイトも出てきてしまうのが悩みでした。
そこで再度調べたところ「病院情報局」というサイトが信頼性もあり評判もよかったので、そのサイトを載せ記事を更新しました。
貴重なご指摘ありがとうございました。
また何かお気づきのことなどあれば、ぜひコメント御願い致します。
追記:お名前がご本名だったので、こちらで編集してHNにしてしまいました。