がんはなぜ発生するの?
がんはどのようにしてできるのでしょうか?
またどのようにがんは大きくなっていくのでしょうか?
今日はがんの発生と、その発生したがんがどのように進行するのかについて見ていきたいと思います。
がんの発生
正常細胞のがん化
私たちの体をつくっている細胞は「核」と「細胞質」からできています。
そして「核」の中にある「DNA」という物質に、私たちの遺伝情報である遺伝子は記録されています。
驚くべきことにたった1つの細胞に約8万もの遺伝子が存在しています。
その8万の遺伝子の中で、がんと関係のある遺伝子は200~300と言われています。
がんと関係のある遺伝子が、何らかの要因(タバコ、食物の焦げ、脂質や塩分の多い食事、紫外線、放射線、食品添加物など)によって傷つけられると、細胞に変異が生じます。
この変異で、正常な細胞ががんを形成できる細胞へと変わってしまいます。
これを「がん化」と呼びます。
がん遺伝子
「がんに関係のある遺伝子に傷がつくと、正常な細胞ががん化する」
ここで述べる「がんに関係する遺伝子」のなかには傷つくと細胞増殖の働きが異常になってしまう遺伝子があります。
これは細胞増殖のアクセルが踏まれたままの状態のことで、このような遺伝子を「がん遺伝子」といいます。
「がん遺伝子」は、細胞増殖をコントロールするたんぱく質をつくっています。
傷がついていない状態なら過剰に細胞増殖させることはないのですが、何らかの要因により遺伝子に傷がつくと細胞増殖を促すたんぱく質を大量に作り出し、際限ない細胞増殖を引き起こします。
がん抑制遺伝子
しかし、私たちの体の中では毎日約数千個のがん化した細胞が誕生しています。
それでもほとんどのがん化した細胞は、悪性腫瘍(つまりがん)にはなりません。
それは「がん抑制遺伝子」が、細胞増殖を抑制したり、DNAに生じた傷を修復したり、がん化した細胞をアポトーシス(細胞死)に誘導しているからなのです。
つまり、「がん抑制遺伝子」はブレーキの役割をしています。
ところが、がん抑制遺伝子に傷がつくと、がん化を抑制する作用が失われます。
こうなると細胞増殖を停止させるなどのブレーキの役割が果たせなくなります。
これを「がん抑制遺伝子の不活性」と呼びます。
がん抑制遺伝子に傷がつき、「がん抑制遺伝子の不活性」が起こることでもがんの発生につながります。
がんの進行
ここまでは、がんの発生について見てきました。
がんが発生した後にどのように進行していくのかについて、今度は見てみましょう。
多段階発がん
1つの「がん遺伝子」や「がん抑制遺伝子」に傷がついたからといって、すぐにがんになるというわけではありません。
傷をもった細胞が増殖し、その上でさらなる遺伝子の突然変異が起きてしまうと浸潤・転移をするがん細胞になります。
最初の突然変異(傷がついて)から、がん細胞になるまでの流れはこうです。
- まずは、発がん性物質やDNAの複製の際のコピーミスによって
正常な細胞のがんに関係する遺伝子に傷がつき、異変が起きます。
※これを「イニシエーション」といいます。 - 異変が起きた細胞が自律的に分裂し始め、
食生活やライフスタイル、発がん性物質など(促進因子、プロモーターともいう)により増殖が加速されます。
その異変が長年かけて複数回起こり、細胞の中に異変が蓄積されます。
※これを「プロモーション(過形生成変化)」といいます。 - そして異変が度重なり、がん細胞になっていく(悪性化する)のです。
さらにこのがん細胞が増殖し、腫瘍を形成していきます。
この状態になると、浸潤・転移の能力を手に入れて移動するようになります。
※これを「プログレッション(悪性化)」といいます。
このように正常な状態から、だんだんとがんに向かうことから「多段階発がん」と言われています。
多段階発がん説は1980年代にフォーゲルスタイン博士が唱え、膵臓がんも同様だと2002年にルーバン博士らが予想、2000年に入ってから遺伝子解析によってわかりつつあるという状況です。
この突然変異が起こる遺伝子として、代表的なものは「KRAS」や「P53」。原発巣である膵臓はもちろん、転移した他の臓器でも、この遺伝子が変異するとのこと。ただし、転移先の臓器のがん細胞ではさらに多くの遺伝子の変異が見られ、いわゆるがん細胞の進化が見られる。転移の進む順番である腹膜、肝臓、肺の順番で変異の数は多くなり、膵臓内では内側よりも外側にあるがん細胞のほうが変異が多いという研究報告がある。一部引用:2014/02/02 本日の日本経済新聞より 「がん細胞は進化する 遺伝子解析、投薬治療に道」
また、膵臓がんは基本的には多段階発がんと言われていますが、遺伝性(家族性)のがんなど別の発生の仕組みの場合もあります。
膵臓がんだと、
①の正常細胞に突然変異が起きてから~③のがん細胞が完成するまでに約11.8年、
③のがんが大きくなる(手術で取れるようになる1~2cm程度)までの期間が約6.8年、
③の他の臓器に転移するようになるまでが約2.6年と言われています。
※膵臓がんで亡くなった患者さんのがん細胞の遺伝子変異の蓄積から計算された年数です。
膵臓がんは、だいたい20年~長いと30年も掛けてがんになるのです。
がんの一生
がんの一生は、3つに分けられます。
- 「前がん期」
- 「前臨床がん期」
- 「臨床がん期」
①前がん期
正常細胞ががん化する前のことを「前がん期」と呼びます。
がん化する前なので、遺伝子に傷がつき変異が蓄積されている段階です。
②前臨床がん期
長年かけて蓄積された遺伝子の傷によって、細胞はがん化します。
前臨床がん期は、細胞ががん化した後からを指します。
この時点では、がん細胞の集まりは非常に微小なので、がんの存在を眼で確認することは難しいです。
③臨床がん期
臨床がん期になってはじめて、がんを眼で見ることができます。
大きさは10㎜以上のがんで、細胞の数としては10億個ほどです。
この時期になりようやく病期として認識され、治療の対象になります。
つまり、初期で発見されても、すでに相当な数のがん細胞ができているということです。
まとめ
がんは、細胞の中の「がん遺伝子」や「がん抑制遺伝子」に傷がつき、異変が起こるところから始まります。
そういった異変が複数回起こり、細胞に異変が蓄積されると、ついにはがん化します。
このがん化した細胞が増殖し、最終的に眼で確認できるまでの大きさに成長していきます。
これが「がんの発生と進行」です。
この記事を読んだ上で、他の記事を読むとより分かりやすいと思うので、参考にしてみてくださいね。
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