膵臓がんにも効く「がん抑える化合物発見」!

膵臓がんにも効く「がん抑える化合物発見」!

膵臓がんを抑える化合物発見のニュース

2017年5月3日にこんなニュースが飛び込んできました。

がん抑える化合物発見 九州大など、数年内に新薬開発目指す。

yahoonews

yahooニュースによる「がん抑える化合物発見」の記事。

「九州大学生体防御医学研究所の福井宣規教授や東京大、理化学研究所などのチームが難治性がんについて、がん細胞の生存や転移に重要な役割をしているタンパク質を突き止め、この働きを阻止する化合物を見つけたと発表した。」

引用:yahoo news

 

驚くべきことに、この化合物は膵臓がんにも有効とのこと。

今日はこのニュースについて取り上げたいと思います。

 

今までの課題

福井教授のチームは「変異した遺伝子をもつがん」を対象として研究してきました。

この変異した遺伝子は、変異することで細胞内で常にスイッチがONの状態となり、増殖や栄養素を奪うといったがん化を引き起こします。

遺伝子の変異によってできたがんは、大腸がんの5割、膵臓がんのほとんど、そして全体の3分の1で確認されています。

現状は、皆さんがご存知の通り、有効な薬はなく難治性のがんとされています。

 

この変異遺伝子をもつがんが生存および増殖するためには、「RAC」という細胞の形態変化を促す分子の活性化が必要なことが分かっていました。

「RAC」が活性化すると、細胞の形態変化を誘導し、細胞運動や細胞膜の一部を変形させて細胞外の栄養源を細胞内に取り込むことができるようになります。

しかしながら、「RAC」を直接コントロールするのは難しいとされています。

なので直接コントロールする代わりに、「RAC」を活性化させている分子を見つければいいのですが、その活性化に関わる分子も不明でした。

 

DOCK1の発見

これまで「RAC」を活性化させている分子を見つけることが課題だったのですが、福井教授のチームはついに活性化に関わるタンパク質を発見しました。

それが「DOCK1」です。

チームは、多くのがんにおいて「DOCK1」の発現とがんの悪性度が密接にかかわっていることに注目。

そこで、「DOCK1」を発現しないように遺伝子操作し、「DOCK1」欠損がん細胞を作り出しました。

作り出したがん細胞と通常のがん細胞を比較したところ、「DOCK1」欠損がん細胞ではがん細胞の周辺組織への浸潤が低下し、また栄養の取り込みも弱まり、がん細胞の生存度が落ちたという実験結果が出ました。

このことにより、「DOCK1」ががん細胞の生存を手助けしている「RAC」の活性化に大きな影響を与えていることが分かりました。

 

がんを抑える化合物「TBOPP」

「DOCK1」の活動を抑えれば、「RAC」の活性化を防ぎ、がん細胞の増殖や転移を食い止めることができるかもしれないということになります。

そこで研究チームは、「DOCK1」の活動を阻害する化合物を探し始めました。

しかし注意しなくてはならないのが、「DOCK1」の近縁にあたる「DOCK2」の存在でした。

「DOCK2」は免疫細胞の活性化に重要な分子のため、がん治療のためには選択的に「DOCK1」のみを阻害する化合物を見つけ出す必要がありました。

チームは、20万を超えるライブラリーの中から適合する化合物を探し、その化合物の構造を最適化し、「DOCK1」を阻害して「DOCK2」には影響を与えない化合物を開発しました。

彼らはその化合物を「TBOPP」と命名しました。

 

「TBOPP」で処理したがん細胞は、浸潤や栄養の取り込みが低下し、生存性が著しく抑制されました。

これは「DOCK1」欠損がん細胞と同様の結果であり、「TBOPP」を用いることにより「DOCK1」を阻害し、「RAC」の働きを抑えているということになります。

 

チームは最後に、がん細胞を移植したマウスに「TBOPP」を投与しました。

すると、がん細胞の転移や増殖が顕著に抑制されました。

また明白な副作用もありませんでした。

マウス実験においても、「TBOPP」は変異した遺伝子をもつがん細胞に有効でした。

 

今後の展開

膵臓がんをはじめとする変異した遺伝子をもつがんが発見されてから30年あまり、治療薬の開発はうまくいってきませんでした。

しかし今回の福井教授らの研究により、化合物「TBOPP」が浸潤や転移を未然に防ぎ、また栄養の取り込みを抑えることで細胞の生存度を低下させることが分かり、一歩前進しました。

この「TBOPP」が、変異遺伝子をもつがんに対する新しい治療薬になる可能性があります。

研究チームは、数年内に治療薬の開発を目指しています。

一日も早い治療薬を期待して待ちたいと思います。

 

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参考サイト

がん抑える化合物発見 九州大など、数年内に新薬開発目指す 西日本新聞

がん細胞の生存・転移に重要なタンパク質を狙い撃ちする化合物を開発―難治性がんに対する新しい治療薬の創出に期待― 国立研究開発法人日本医療研究開発機構

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