膵臓がんに対しての効果
残念ながら、現在の研究結果では膵臓がんに対しては効果が出ていないそうです。
他にも前立腺がん、大腸がんには効きにくいという報告があります。
効くがんと効かないがんがあるひとつの要因として言われているのは、「遺伝子にある変異(ダメージ)の数」です。
「遺伝子に変異(ダメージ)が多いものほど免疫細胞が攻撃対象と判断しやすい」ため、肺がんや悪性黒色腫はたばこや紫外線での遺伝子へのダメージが他のがんよりも多いそうなので、特にオプジーボの効きがよいのではないかと言われています。
また、効きにくいという大腸がんでも、遺伝性の大腸がんでは通常の大腸がんのがん細胞よりも遺伝子に変異が多いため、オプジーボが効いたという報告もあります。
前のページで解説したPD-L1が発現している癌のほうが効きやすいと言われていましたが、発現の少ない癌でも効いたとの報告もあり、まだよくわかっていないのが現状です。
「オプジーボ」の問題点
問題点1)オプジーボの治療を受けられる人が限られている
「オプジーボによる治療は、手術による治療が難しい患者さんが対象」になる、つまり進行した皮膚がん、肺がんの方で、十分な体力のある人でないといけないということ。
オプジーボは自分の免疫を使うので、体力が落ちていては使えないそう。
そして、オプジーボに含まれる成分に対して、過去にアレルギー反応(気管支けいれん、全身性の皮膚症状、低血圧など)を起こしたことがある場合、さらに重いアレルギー反応が出る可能性があるため治療が受けられなかったり、自己免疫疾患や間質性肺炎にかかったことがある場合も治療ができない可能性があります。
それなのに、他の抗がん剤と一緒ではありますが、どの患者さんに効果があるのか見極められない上に、すべての患者さんに効くわけではないのも懸念すべき点です。
臨床試験では、メラノーマの患者3割、肺がんの患者2割にオプジーボが有効とのこと。
問題点2)効果が出るのが遅い
効果の有無を早い段階で判断できないという問題点もあります。
- 改善がわかるまでに6回の投与が必要になることもある。(2週間に1回投与なので、6回=12週後。つまり3ヶ月が必要)
- 免疫療法では効果が出る前にがんが大きくなる場合もある (画像診断では悪化しているようでも腫瘍マーカーや血液検査では改善し、治療継続半年後には改善している例もある)
- 余命が1~2カ月の末期がん患者さんの場合、効果が出る前に亡くなってしまうこともある。
問題点3)非常に高額
※2017年2月1日から価格が50%引き下げられることになりました。詳細は以下。2016年11月17日追記。
中医協 がん高額治療薬「オプジーボ」 価格50%引き下げ了承
薬が高額な理由は、開発に15年もかかっていて、その開発費が薬価に反映されているからです。
国内販売価格は肺がんの場合、体重1kgに対して3mg必要になるので、60kgの人なら1回の投与で180mg=約130万円かかります。
※体重とがんの種類で変わる。
※半額になる前の価格で計算。
投与は2週間に1回(13日休薬)なので、1カ月に2回投与だと、1年で24回・・・1年間で合計3,120万円!
高額医療費制度は一度は自分で払い、後々返って来る制度なので負担は大きいのは確かですが、最終的には患者さんは月8万円程しか払わないとすると、その差額(3,024万円)は国民健康保険から支払われる・・・つまり国の負担となるわけで、国が潰れるのではないかと噂されています。
▼ちなみに、小野薬品による高額医療費制度を用いた治療費(月の負担額)のPDFもあります。
ただ、これでも当初よりも安くはなっているようで、現在は当初に比べると6~7割程度の金額になっています。(2015年9月に値下げされた。)今後も価格改正で金額が下がる可能性も十分にあります。※2016年5月29日時点
現在も薬価の引き下げが検討されており、最大25%減となる可能性があるようです。 11月9日、政府は最大50%値下げの調整に入ったと報道されており、薬価反映は年度内とされています。
※2016年11月10日追記
厚生労働省は10月5日、最大25%減とする案を中央社会保険医療協議会で示し了承された。
薬価は原則2年に1回改定されており、次回は2018年度に実施予定だった。期中での引き下げは異例で、15年度医療費(速報)が41.5兆円と13年連続過去最高を更新する中、国民皆保険制度の維持のため狙い撃ちにした形だ。
出典:高額薬オプジーボ異例の薬価引き下げが起こす波紋 | ダイヤモンド・オンライン
※2016年10月20日追記
ちなみにオプジーボの薬価は、日本が100mg約73万円(半額になる前)に対し、アメリカは約30万円(日本は2.5倍)、イギリスでは約14万円(日本は5倍)と日本がとても高いことがわかります。
問題点4)副作用への対処
副作用は少ないといいますが、重篤な副作用が発生する可能性もあります。
2016年7月19日、免疫療法とオプジーボを併用したことによる副作用(多臓器不全による心不全)で死亡するということが起こり、小野薬品工業は医師に向けてこうした治療を同時に行わないよう注意喚起をしています。
詳しくはこちらの記事⇒「新免疫治療薬「オプジーボ」で副作用、1人死亡(twitterまとめ 7月17日~26日)」
注意すべき副作用は、間質性肺炎、筋無力症、重度の下痢、1型糖尿病など。
▼こちらも小野薬品のわかりやすい資料がPDFであります。
実際に投与した患者さんで、皮膚が赤くなりかゆくなる、投与した日に眠気が出るといった症状だけだったという方もいらっしゃるようです。(2年間投与した皮膚がんの70代男性)
抗PD-1抗体の副作用(間質性肺炎をのぞく)へ対処するための抗サイトカイン療法や、薬による軽微な副作用などに気づける、知識のある「免疫アレルギー膠原病の専門家」のいない病院では、重篤な副作用への対処ができない可能性がある点が心配だという意見もあります。
イレッサの時と同様のことが起きないか注意深く見ていく必要がありそうです。
「イレッサ」はゲフィチニブという非小細胞肺がんに対する分子標的薬(抗がん剤)。世界に先駆けて日本で承認され、発売当初は効果が高いのに副作用が少ないと画期的で、副作用に対する十分な知識がないまま投与を行い、間質性肺炎による死者が相次いだという問題。(抗がん剤の種類と副作用より引用)
さいごに
オプジーボは膵臓がんには効果はないですが、がん細胞による免疫細胞への「ブレーキの解除」+免疫本来の力を出させる「アクセル」という新しく出てきた考え方は、きっと今後につながっていくはずです。
免疫自体は本来がん細胞を抑制・消去する力はあるので、この仕組みは今後に生かされ、膵臓がんにも効く治療法が確立されることも遠い未来ではないかもしれませんね。
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