対処法
食事の工夫
味覚障害を起こしたときにできる食事の工夫があります。
まずは、いつもと違ってまずいと感じる食品は避けましょう。
それから、なめらかな口当たりの食品がおすすめです。
なぜなら、表面に水分があると唾液の代わりになるため、なめらかな口当たりの食品(あんかけ、煮物など)の方が味を感じやすくなるためです。
また消化管全体の粘膜が過敏になっていることがあるので、消化によい料理を選びましょう。
消化に良い料理を選ぶことで、胃もたれや下痢などの不快感の予防にもなります。
食事を取れるタイミングがあれば、食べられる味付けを試しておきましょう。
最後に食事だけでなく、食事を楽しめる環境にも気配りをしてみましょう。
例えば、食卓や食器、盛り付けを工夫したり、眺めの良い場所を選んでみてもいいと思います。
次に味覚の症状別に対処法を挙げてみました。
本来の味と異なって感じる
塩味や醤油味を苦く感じる場合や金属味を感じる場合などが当てはまります。
出来ることを箇条書きにして挙げてみました。
- 塩味、醤油味を控える
- 食前にレモンやフルーツジュースで味覚を刺激する
- まろやかな味(ミルク煮やポタージュなど)や、はっきりした味(カップ麺など)などの色々な味付けを試す
- カツオや昆布などのだしの風味を利用する
- レモンや胡麻などの香りや風味を利用する
- 魚に塩や酒を振るように、アク抜き・臭み抜きなどを適切に行う
- 酢を強くし過ぎずに、酢の物を取り入れる
食べ物を苦く感じる場合は、以下のことも試してみてください。
- キャラメルやあめで口直しをする
- だしの利いた汁物を摂る
- 茶碗蒸しや卵豆腐は食べやすい
- 薬味や香辛料を取り入れる
味を強く感じる
甘味を強く感じる場合は
- 甘い食材と調味料(砂糖やみりん)を控える
- みそ味、塩味、醤油味を濃くしてみる
- 塩味や酸味を取り入れてみる
- 別の風味、例えば青しそ味などの爽やかな風味を利用する
- 薄い味、もしくは味つけがないものを試す(豆腐や野菜スティックなど)
- 汁ものは甘く感じない場合があるらしいので、汁ものを試す
- 酸味のあるスパイス、ジュース、酢を利用する
味を弱く感じる、もしくは感じない
- 味を濃いめにし、甘味・酸味・塩味など色々試す(例えばカップ麺、カレーなど)
- 酢の物、汁物、果物などを多く取り入れる
- 味を感じやすい人肌程度にする(汁物は冷まし、飲み物は室温)
口内を清潔に
口腔ケアを行うことで化学療法による口内炎や感染症を防ぎ、味覚障害や食欲不振を軽くすることができます。
うがい
唾液が出ず口の中が乾燥すると、唾液が味の成分を味蕾に運ぶことができず、味を感じにくくなります。
つまり口の中が潤った状態であれば、味覚障害の予防になります。
口を潤すためにうがいは有効な手段です。
水道水で1日に何度か口をゆすぎましょう。
また食前にレモン水やレモン味の炭酸水でうがいをすると、唾液の分泌が促され、味覚の低下を予防する上に味覚の回復が期待できます。
舌苔
唾液が減ると舌が乾燥し、舌の表面に舌苔と呼ばれる白い苔のようなものが付着します。
これは舌の細胞がはがれたもの、食べかす、細胞などが堆積したものです。
舌苔が付くと、味覚が分かりにくくなります。
そのため舌もブラッシングなどできれいにしておきましょう。
歯みがき
歯ブラシなどで口の中の汚れや食べかすを除去するのも、舌苔を防ぐことにつながるので、味覚障害の予防になります。
水分補給
唾液の代わりに水を摂りましょう。
特に味のないミネラルウォーターなどが良いです。
口の中にスプレーする人工唾液「エリベート」や保湿剤の「オーラルバランス」などもあります。
口の乾燥がひどい場合は、主治医に相談し、こういったものを補助的に使うのもいいかもしれません。
亜鉛を摂取する
亜鉛の1日所要量は成人男性12ミリグラム、成人女性9ミリグラムです。
ただし味覚障害の治療には、1日50ミリグラムが必要という意見もあります。
食べ物から摂る場合は以下のような亜鉛の多い食品から摂ると効率がいいでしょう。
食品群 | 食品名 |
薄力粉、ゆば、そば粉、玄米 | |
プロセスチーズ | |
卵黄 | |
カキ、数の子、魚卵 | |
牛の肝臓、牛肉、豚肉 | |
きなこ、小豆、納豆 | |
パセリ、かぶ菜 | |
天草寒天、のり、わかめ、干しシイタケ | |
その他 | 抹茶、煎茶、玄米茶、ココア、紅茶、ごま、栗、カシューナッツ |
抗がん剤の使用によって亜鉛不足が心配される時には、亜鉛製剤を処方されることもあります。
エレース液
口内がただれていたり、放射線で軽いやけど状態になっているときは、粘膜保護剤「エレース液」で口をゆすぐと効果的です。
ただし効果は炎症のある口の中のみなので、炎症がおさまっている場合は効き目がありません。
これを使ってみたいと思う方は、主治医に相談してみてください。
ビタミンB6やB12
神経由来の味覚障害が疑われる場合には、ビタミンB6やB12を服用するといいかもしれません。
神経障害からの回復を手助けすると言われています。
しかしながら、効果がまだはっきりしていないので、確実な効果はあまり期待できません。
味覚障害の研究について
最後にがん治療における味覚障害の今後についてです。
味覚やその障害について研究が進んでいますが、ここでは抗がん剤服用している人の研究にスポットライトを当てたいと思います。
現在、徳島大学医歯学研究部代謝栄養学分野の堤理恵助教が抗がん剤治療中の副作用としての味覚障害のメカニズム解明に取り組んでおられます。
堤先生は抗がん剤治療中に舌の味覚受容体遺伝子T1R3が減少することを突き止め、またうま味を付加するとその受容体減少を抑制することも発見しました。
この発見をもとに、うま味成分を適量含んだ「ふりかけ」を開発しました。
患者さんたちに大好評だったことから、現在ふりかけメーカーと共同開発中とのこと。
うま味成分が味覚受容体遺伝子T1R3減少を抑えることは分かったものの、なぜうま味を付加すると減ることを抑えられるのかは分かっていません。
そこで堤先生は、今回の研究でこのメカニズムを解明したいと考えています。
抑制のメカニズムが解明されれば、うま味以外にも味覚受容体遺伝子を維持する食材を見つけることができるかもしれません。
そうすれば、抗がん剤治療中であってもおいしく食事をしながら、味覚障害を改善できます。
今のところ、抗がん剤治療中の味覚障害には、残念ながら誰にでも効く確実な治療はありません。
この研究が進展することで、食べられる食材のみならず、味覚障害の治療薬すらも将来できる可能性があります。
現在この研究はクラウドファンディングのプロジェクトとして皆さんの支援をお願いしています。
ちなみに20,000円以上の寄付されると、個別栄養相談に乗っていただけるみたいです。
2017年7月下旬までの受付となっています。
ご興味のある方は、以下のサイトをご覧ください。
味覚障害でもおいしく!抗がん剤副作用としての味覚障害のメカニズムを解明する OTSUCLE
目標金額600,000円で、現在(6/30)546,000円の支援総額だそうです。
参考資料
抗がん剤と放射線の副作用 味覚障害はなぜ起こる?どう対処する? がんサポート
『味覚変化がある方のお食事』(PDF) 国立がん研究センター東病院 栄養管理室
悩みと助言(抗がん剤による味覚の変化) 静岡県立静岡がんセンター
うま味の生理学 日本うま味調味料協会(味の素、ヤマサ醤油他2社による)
- 1
- 2
【膵臓がんでも幸せに楽しく生きる】からお知らせを受け取るには?
FacebookやTwitterではがんの最新情報やおすすめの癒し情報など随時配信中です。ブログの更新もお知らせしているので、ぜひ登録して活用してくださいね♪
▼Twitterをフォローする
Follow @okasanproject
▼Facebook いいね!
⇒すい臓がん ブログランキングを見る ⇒FC2 ブログランキングを見る