痛い口内炎
多くの人が一度は経験する口内炎。
とても痛いですよね。
がん患者さんが、口内炎になる原因としては、以下のような場合が考えられると思います。
- 吐き気が強いなどの理由で、歯磨きができなきなかったり、水分や食事の摂取が不十分で、口腔衛生が不良で起きる口内炎。
- 病気や過労などで体力が衰えているとき、つまり全身状態の低下で起きる口内炎。
- モルヒネなどの薬物の作用によって唾液の分泌が抑制され、口腔内の乾燥が生じて起きる口内炎。
- そして、抗がん剤や放射線治療などのがん治療で起きる口内炎。
今回は、抗がん剤で起きる口内炎について解説していきたいと思います。
抗がん剤で出る口内炎って、どういう口内炎?
国立がん研究センターが運営するサイトのがん情報センターによれば、
抗がん剤が投与されると4、5日経過したころに口の粘膜に変化が出始めます。
粘膜が、腫れぼったくなって、ピリピリした感じがします。
7~12日経過すると、粘膜が赤くなり、その一部がはがれて潰瘍ができます。
この時期が口内炎の症状のピーク(炎症による痛みが一番強い時期)になります。
ピークを過ぎると、約1週間で粘膜が再生し、元どおりの粘膜に戻ります。
口内炎の出る期間は約2週間(口内炎の始まりからピークまでの1週間、ピークから粘膜が治るまでの1週間)になります。
抗がん剤治療は、2、3週おきに繰り返し行われることが多く、そのたびに口内炎が出る可能性があります。
もしも、抗がん剤をやるたびに口内炎ができるとしたら、化学療法中ずっと口内炎ができる人もいるということです。
あの痛い口内炎がずっとあるなんて大変なことです。
では、どうやったら口内炎が和らぐのでしょうか?
口内炎の状態と痛みの対処法
口内炎も軽度な場合から、重度な場合まであります。
また、その度合いによって、痛みの対処法も違います。
口内炎の状態
軽い口内炎:口の中がざらざらする、のどに違和感がある
やや強い口内炎:口の中がヒリヒリして痛い、食事はできるが飲み込むと痛い
強い口内炎:口の中が痛くて話せない、痛くて飲み込むことができず食事もできない
痛みの対処法
軽い口内炎
うがい(口をゆすぐ)を1日3回する。水(ぬるま湯)か生理食塩水を使う。
①水を綺麗にします
水1リットルを10 分程度沸騰させ、殺菌とカルキを煮沸で飛ばします。
※実際使うのは500ml ですが、残りの500mlは容器を殺菌する為に使います。
②火を止め蓋を閉めて冷まします
ゴミが入らないようにフタをします。
③器を綺麗にします
ペットボトルの500mlの容器などを流水で何回もすすぎます。
その後に、①で沸騰させた水500mlで2 回程殺菌します。
④塩を入れます
①で作った水をよく洗った容器に100 ml 程入れ、5g(小さじ1)の塩を入れてよく混ぜます。
塩が混ざって見えなくなったら、①の水400mlを足して、500ml にして出来上がりです。
引用元:生理食塩水。安全な作り方のポイント | 季節の話題と日本の歳時記 – 2015
やや強い口内炎
うがい(口をゆすぐ)+痛み止め。うがいに加えて痛み止めを1日3回飲みます。痛みが強い時は、早く効く医療用麻薬を追加で飲むこともあります。
強い口内炎
うがい(口をゆすぐ)+痛み止め+医療用麻薬。痛み止めと医療用麻薬の両方を決められた時間に服用してください。食前に局所麻酔薬を混合した水で、口をゆすぐこともあります。
がんの痛みなどをコントロールするために、しばしば医療用麻薬が使われます。
ただ麻薬というと、麻薬中毒や最後の手段といったイメージがあるかもしれません。
しかし、世界における20年以上の経験から、がんの痛みの治療には、モルヒネなどの医療用麻薬による鎮痛治療が効果的であると証明されています。
なので、鎮痛効果を得るためにがんの初期から使うこともあります。
また誤解されているような麻薬中毒などの副作用は、医師の指示のもとに使用している限り、 認められないことが明らかになっています。
市販薬で口内炎を早く治す方法もある
歯科医の長尾忠様からコメントで教えていただきました情報です。神奈川県横浜市旭区にあるファミリー歯科の先生で、こちらの記事にここで紹介するに内容が詳しく書かれています。
30年以上前から一部の歯科医院で調合・処方されているものだそうで、市販薬単体よりも早く治るとのこと。
ご紹介いただいた方法は、市販されている「テラコートリル軟膏」と「ケナログ」を1:1(テラコートリル軟膏は唾液で流れやすい&苦いため1:2でもOKだそう)で混ぜて、綿棒で口内炎にちょんと載せる、というものです。
▼わかりやすいように載せておきますね。Amazonで買ってもいいですし、薬局でも買えます。そんなに高くないですね。
「ケナログ」は歯医者へ行ったときにも処方される口内炎薬ですが、ステロイドなので消炎作用のみ・バイ菌等を殺す力はないそう。
「テラコートリル軟膏」は薬事法改正前は口腔内の傷全般にOKとされていた市販薬で、ステロイド&抗生剤。今は内容が変わっていないのに「口内炎にOK」と書かれていないのは、成分を吸収しやすい粘膜に使用することから医師が処方すべきとされているからか、適応外となったようです。
歯医者で処方されるテラコートリル軟膏と市販薬は全く同じ内容だそうなので、混ぜても大丈夫ですが、混ぜるときに異物や雑菌が入ることも考えられる(まれだと思いますが)ため薬剤師としてはおすすめしていないみたいです。
ステロイドの軟膏に、さらにステロイドの入った軟膏を混ぜるというのは心配になるのは当然です。
ステロイドは長期間使わなければ副作用が出ることはほとんどありませんし、
実際に歯科医院にて同内容・同容量で患者さんに処方されている調合なので、心配しすぎる必要はなさそうです。
ただ、混ぜる際に清潔に保つ必要があるといった点や薬事法では推奨されていないという点でも、
使う場合には様子を見つつ、自己責任でお願いします。
口内炎と食事
軽い口内炎であれば、食事をすることは可能です。
しかし、やや強い口内炎以上になると、痛み止めを使わないと食事を取ることが大変になります。
また、抗がん剤の影響で味覚異常が起きることもあります。
食事の工夫
口内炎ができた時には、食事に一工夫しましょう。
- 刺激を減らすために、熱いものは人肌程度に冷ましてから食べましょう。
- 塩分、酸味、香辛料を含む食べ物は控えましょう。
- 軟らかく煮こんだり、裏ごしをしたり、とろみをつけると食べやすくなります。
- あまりにも口内炎が痛むときには、濃厚流動食(バランス栄養飲料)や栄養補助食品を利用しましょう。
私が美味しいと思った栄養補助食品の紹介記事はこちら。
がん情報センターによれば、下図が取りやすい食材とおすすめできない食材だそうです。
口内炎と口の掃除
口内炎があるときは、歯磨きをしたり、うがいしたりするのが辛いです。
しかし、口の掃除を行わないと、口腔内の衛生状態が悪くなります。
口の中が不衛生な状態になると、細菌が増えて、その細菌が唾液と一緒に気管に入り込みます。
すると、口の中で増えた細菌のせいで肺炎を起こすことがあります。
他にも、口内炎の潰瘍部分から増殖した細菌が血管に入り込み、血管を通して全身に広がり、高熱が出ることもあります。
従って、口腔を清潔に保つことは重要です。
口の掃除方法
口内炎が軽い場合は、歯ブラシは「やわらかめ」と表示のされているものを使い、ヘッド(毛のはえた部分)は小さい歯ブラシを使いましょう。
歯磨き粉がしみるときは、水だけで磨くといいです。
口内炎が強い場合には、口を大きく開けることが困難になることもあります。
その時には、小さなヘッドの歯ブラシで口内炎を避けて、口内炎に影響のない歯と歯ぐきを磨きましょう。
口内炎が非常に強く出てしまい、歯磨きができないこともあります。
そんな時には無理をせず、水(ぬるま湯)や生理食塩水などでうがいをしましょう。
口内炎が良くなってきたら、歯磨きを再開してください。
口内炎が良くなれば、生活の質が上がる
抗がん剤の治療によって、口内炎が出ることがあります。
その口内炎の状態も軽い、やや強い、強いと3段階に分けることができます。
軽い場合には、うがい(ゆすぐ)。
やや強い場合には、うがいと痛み止め。
強い場合には、うがい、痛み止め、そして医療用麻薬。
また口内炎がある時には、食事に一工夫をする必要があります。
忘れてはならないのが、口腔を清潔に保つこと。
口内炎が強い時も、口をうがいで清潔にすることなどが求められます。
ここまで口内炎について、またどう痛みを和らげるかなどについてご紹介してきました。
上記にある内容を実行してもまだ痛む場合は、ハチミツをおすすめします。
詳しい内容は以下のリンクをご覧ください。
口内炎を治したいあなたに捧げる!口内炎マスターが授ける口内炎を治す4つの秘術
少しでも口内炎が良くなり、生活の質が上がり過ごしやすくなることを願っています。
歯科医です。テラコートリル軟膏とケナログその他口内炎用ステロイド軟膏を混ぜると口内炎に劇的に効く特効薬が出来ます。あらゆる口内炎用外用薬に比べ約3分の1の早さで治ります。詳しくはファミリー歯科口内炎の治し方ブログをご覧ください。抗がん剤の副作用による口内炎で苦しむ方がたのお役に立てれば幸いです。
長尾忠様
コメント頂き、ありがとうございます。
抗生剤とステロイド軟膏を混ぜる方法、知りませんでした。
30年以上前から使われている調合でしたら安心ですね。(ほかの方のブログにコメントされているのを拝見しました)
患者さんの役に立つ情報ですので、ぜひ詳しい内容を本文にも掲載させていただきたいと思います。
ケナログ単味で塗っても、二種類のステロイドを混ぜて塗っても一回の塗る軟膏の量は変わりません。つまり二種類のステロイドを混ぜて塗るということは、それぞれのステロイドを半分ずつ混ぜて塗るということです。粘膜に吸収、飲み込むステロイドの全体量は変わりません。ケナログの様なステロイド単味の軟膏で口内炎が治るはずなく漫然と塗り続けると一週間も二週間もステロイドを飲み込むことになり、そちらの方がステロイドの副作用が心配です。合剤にして塗れば2~3日で治り、飲み込むステロイドの量が遥かに少なくて済みます。